苔は鑑賞目的だけでなく実用的な使われ方もします。現在でも園芸用にランなどを栽培する際に、根を包む素材として「ミズゴケ」を使うのは知られています。その他にも都心のビル群でヒートアイランド対策に屋上緑化が進められていますが、その際の植生として強い日差しに強い「スナゴケ」が採用されることも多いです。
古い時代にさかのぼると、木造船を建造する際に板と板の隙間の防水のために、蘚類のコケを縄状に編み上げたものを隙間に挟んで止水していたという事が文献に残されています。さらに古い時代になると、石器時代の火打石のなかに手で持つ部分をコケで保護したものが発見されているのです。
さらに第一次大戦時には、ミズゴケを原料にした脱脂綿がたくさん作れていて、コットンを原料とした脱脂綿の代用品となっていたのです。現在ではそのような使われ方はしていませんが、脱脂綿が不足する戦時中には良好な代用品だったのでしょう。