よくコンクリート壁や石垣などで見かける鮮やかなオレンジ色の苔のようなフワフワした物体を見かけた事はありませんか?
これは実は苔ではなくて「スミレモ」という緑藻類で、よく川底などの石に生え川魚のエサになっている藻の仲間です。このスミレモは藻の仲間なのに藻の代名詞である緑色で水の中に生えるという一般論から外れた変わり者なのです。
そしてスミレモの鮮やかなオレンジ色は自身の色ではなく、カロチノイド系の色素で野菜のニンジンでいうカロチンと似た物質を蓄積しやすい性質のためオレンジ色に見えます。そのため生育場所によってはオレンジ色の度合いに差があり、緑藻類本来の緑色に近い個体も存在します。
また「スミレモ」という名前は諸説ありますが、どうやら草花のスミレの匂いがすると言われ「菫(すみれ)+藻(も)」呼ばれるようになったという説があります。でも実際に鼻を近づけ匂ってみるも全くスミレの香りは感じません。これは個人の臭覚の感性もあるので何とも言えませんが…。もし機会があったら皆さんスミレモの香りを試してみてください。
これとよく似たオレンジ色の地衣類に「ツブダイダイゴケ」という種類もありますが、これはまた別の機会に紹介したいと思います。
そのほかにも、「黄色いコケ」と呼ばれてしまう生物もいます。もし検索で “オレンジ色の苔” を探して、このページにたどり着いたけど違うなと思ったら、この記事も参考にしてみてください。⇒【黄色いコケと呼ばれてしまう「ロウソクゴケ」】とても鮮やかな黄色をしていて、見ためもコケにそっくりです。
2020/11/30追記
先日ハイキング中に林道の法面に生えていたスミレモを見つけ、この記事の事を思い出したので匂いを嗅いでみることにしました。
どうやら鼻を近づけるくらいではスミレの匂いはしない事が分かりました。法面に生えているスミレモの表面を手で優しく擦ったあとに、擦った手の方を嗅ぐと微かに菫(スミレ)の香りと言うか、トイレの芳香剤のような匂いを感じる事が出来ました。
個体差があるのかもしれないので、また思い出した時にはスミレモの香りを味わってみたいと思います。