一般的なゼニゴケの特徴というと、葉状体の表面に見られる独特の点々としたツブツブ模様を思い浮かべますよね。この模様がはっきりと期待どおりに見られない種類もあり、そのひとつが「ケゼニゴケ」です。
ケゼニゴケは漢字では「毛銭苔」と書きますが、パッと見は毛が生えている様には見えませんよね。ただ雄器床や雌器床が発達してくると、そこには毛虫のような毛が生えているのを観察できるようになります。しかし、この毛が名前の由来になった「毛」ではないのです。
名前の由来となった「毛」は、どうやら若い葉状体を良く見ると白く光った網目模様が見え、それが産毛の様に見えたからだと言われています。この産毛のように見える模様は何かというと、ゼニゴケ目の葉上体に見られる独特の模様をつくる気室孔と気室が、ケゼニゴケではほとんど退化してしまったように見えて、気室がつくる外殻の網目模様に太陽光が反射して白く光り、産毛のように見えているのです。
とくに初夏には太陽光の射しかたや個体差によって、ライムグリーンの葉上体に白く輝く網目模様は、ケゼニゴケの美しく見えるポイントでもあります。もちろん初夏に発生する毛の生えた雄器床や雌器床も、ケゼニゴケの愛好家にとってはチャームポイントになります。
ちなみにケゼニゴケは雌雄同株で、雄器床と雌器床は同一の葉状体に形成されるはずですが、ほとんどがどちらか一方しか発生していないように感じられます。また、ケゼニゴケの雄器托(雄器床と托柄)や雌器托(雌器床と托柄)の発生時期は、他のゼニゴケより遅く晩春から初夏にかけてが良く観察できます。