苔は自然界で「ゆりかご」のような存在になって、生き物の幼少期を支えている事もあります。この写真のキノコが生えていた場所は、菌類の生育や成熟に適した環境とは違い、日当たりが良く風通しが強くやや乾燥気味の土地に生えていました。このキノコの幼少期(菌糸や原基)を日光や乾燥から守り、程よい湿度と温度を保っていてくれていたのが、この地表を覆う苔たちなのです。
そして植物のお話しでは、とても苦い生薬の原料である「センブリ」という植物は、種を土に蒔いても発芽率が極めて悪く2年草の株まで成長させることが難しいです。しかし種を苔の上に蒔くと発芽率も高くその後の生育も順調に育つのです。
どうやら科学的に解明はされていませんが、「センブリ」の発芽には苔の持つ特定の要素が必要なのかもしれませんね。また知人の山野草愛好家から聞いたのですが、「スミレ」は土でも発芽しますが苔の上に播種した方が発芽率が高いようです。
動物の話しになりますと、野鳥の「ミソサザイ」は巣作りに苔を多用し、なかには苔単材できれいな壷型に作り上げる雄鳥も多くいます。また「シジュウカラ」の中には、特定の苔だけを選択的に集めて巣をつくる個体もいて、彼らにとって苔は巣の建材としての機能性だけを選定基準にしているのではないのかもしれません。もしかしたら近年注目されている苔の持つ共生菌など、未知の効能を利用しているのかもしれませんね。