苔はどうしてこのような容姿になったのだろうと考えると、もちろん人々に鑑賞してもらうために美しく洗練されていったのではありません。おそらく苔は繁栄するための環境要因としては、光や肥料分はさほど重要ではなく水が最重要な物質です。そのため水をより効率的に吸収するように進化し、その過程で水を効率的に集められた個体だけが生き残った結果、今の美しい容姿に自然淘汰されたものだと考えられます。
上の写真のスギゴケを例にあげると、細い葉と葉を密にして隙間に水を貯め込むよう工夫されています。広葉樹の葉っぱのように広くツルツルとした表面だと、水は表面張力により球体になり転がり落ちてしまいます。細くて薄い葉を密にすることで、水と葉それぞれが持つ+-の電荷により引寄せあい、葉と葉の狭い間に跨るように水滴を作り保持します。
またスギゴケを代表に蘚類は、単体で生えている事はなく概ねコロニーをつくり密集して生えています。この密集したフカフカの姿も美しいと評価されている苔の特徴ですが、これにも大きな意味があります。スギゴケ1本だけで生えていると… 陽射や風によりあっという間に周囲の湿気は飛ばされカラカラに乾燥してしまいます。これを防ぐために密集してコロニーを作り、周囲の空気を停留させたり、遮光により苔の足元の湿度を高く保っています。
以上、「苔は水との相性を高めるために今の外観になった」と言うお話しでした。