コケ(蘚類)と地衣類は好む生育環境の条件がとても似ています。自然界では生活環境が同じ異種は、お互いはライバルとなって生存競争の相手になってしまいます。それは太陽の光エネルギーを利用する植物界では特に陣地争いにおいて顕著で、太陽の光をより効率的に得られた種が勝者になります。
その生存競争に勝つために種子植物の多くは、少しばかり排他的な所があり自らの葉を大きく広げて下草を衰弱させたり、根からは自分以外の非自己の成長を抑制する抗生物質を作ります。しかしコケと地衣類は好む生育環境はほぼ一緒で、繁殖方法も同じく胞子で増えていく生物なのに、同じ場所に重なり合うように生えている事も良く見かけられます。
上の写真は匍匐性のコケの上に葉状地衣類が繁殖し、その地衣体の上にはコケが伸びてきています。互いに敵対視し排除しようとしているでのしょうか。というよりもお互いを排除することなく重なり合っています。
こちらも朽木に生えたコケの間から生える地衣類。おそらくヤリノホゴケと思われますが、この地衣は樹皮や朽木といった限られた生育環境を選択しているのにもかかわらず、コケを排除する事なく同居しています。
こちらの地衣類の上には、お隣のコケの蒴が伸びてきています。このまま蒴が成熟して胞子が出てくると、おそらくお隣さんの陣地にも飛んでくるでしょう。さすがに地衣体の上に落ちた胞子はいくら排他的でなくても、発芽し原糸体から植物体に成長るなんて事は考えられません。
コケと地衣の関係で、寄生植物のヤドリギのように養分を吸収する寄生関係になっている姿は見たことがありません。要するに「コケ」と「地衣類」は、隣同士は良いけど同居はお断わりというスタンスで絶妙な距離感を維持しているのでしょう。